ミラーリング=鏡のように相手に合わせていくこと
同じ魚が集団で回遊したり、同じ属性の動物(牛や猿、馬など)が群れて生活する事など、似たもの同士が同じような行動をとることを“類似性の法則”と言います。
この”類似性の法則“を心理的に効果的に活用する方法に深く関係しているのがミラーリングです。
動作や姿勢、表情も含むボディーランゲージを相手に合わせていくことで、親近感を持ってもらったり、好感を持ってもらいやすくします。
- 手や足を組んだら、同じように手や足を組む。悩む仕草を見せたら同じように悩む。=視覚的ノンバーバル
- 声のトーン、リズム、話すスピードを合わせる=音声的ノンバーバル
夫婦が互いに似てくるのは相手に対してミラーリングする回数が増えてくるからともいわれています。
ミラーリングの頻度が高くなるとラポールの形成に有用になってきます。
理化学研究所での研究でも2人の間の発話リズムが揃うと同時に、脳波のリズムが揃うことが発見されています。
また、「ビジネスは話し方が9割」にも記載されていますが、営業成績の良いビジネスパーソンほど、ミラーリングを無意識に行っているのだそうです。
ミラーリングの実践
バックトラッキングの記事の際に出てきた髪が膨らむ方のカウンセリングを元に話します。
髪の毛が膨らんでしまって気になっているのですよ・・・それで相談したくて・・・
髪の毛が膨らんでしまって気になっているのですね。(目を髪に移す)そうですね。(少し声のトーンを下げながら話していく)確かに気になりますよね・・・(心配そうに)
(もう一度お客様に目を戻して)それでどんな相談でしょうか。可能な限りお答えできる様にしていきますので、何なりとおっしゃってください。
こちらではバックトラッキングを使って相手の言葉、表情を相手に返していましたが、ここでさらにミラーリングをしていきます。
髪の毛が膨らんでしまって気になっているのですよ・・・それで相談したくて・・・
この状態の時に髪の毛を触らないお客様はいませんよね?しかも声のトーンは下がっているはずです。
髪の毛が膨らんでしまって気になっているのですね。(お客様の動作に合わせて自分の髪をエアーで触る)(目を髪に移す)「失礼します。髪の毛触らせてもらいますね。そうですね。(少し声のトーンを下げながらお客様が話したスピードに合わせて話していく)確かに気になりますよね・・・」(心配そうに)
(もう一度お客様に目を戻して)それでどんな相談でしょうか。可能な限りお答えできる様にしていきますので、何なりとおっしゃってください。
青字で書いたところが視覚的ノンバーバルと音声的ノンバーバルです。エアーでも良いのでお客様の行動を真似して自分でも場所の確認しておくことで、触診する際に確実な場所がわかります。言葉だけの場合は「気になるところはどの辺ですか?」や「一番気になるのはどの辺りですか?」などスタイリスト主観ではなくお客様の主観で気になるところを実際に触ってみてもらってください。より的確にスムーズにカウンセリングが進みます。
売れない理容師・美容師の典型
- カウンセリングに入る前から櫛を通す、触る。
- 「あ〜この辺ですか?等と自分主観で勝手に話を進める」
経験値が上がってくるとおおよそお客様の気になるところのデータが集まり、推測しやすくなります。しかし、あくまで主役はお客様です。目の前のお客様が気になる場所はお客様にしかわかりません。会話を遮らずにお客様主体のカウンセリングにしましょう。新規のお客様ほどミラーリングは効果が高まります。
ミラーリングの注意点
お客様の行動・表情を真似するミラーリングはお客様に親近感を持ってもらう行動として有用ですが、注意すべき点も多数存在します。
ネガティブなアクション
ネガティブなアクションとして思いつくのは
- 「いや」「けど」「でも」「しかし」など否定的な言葉・口癖
- ため息をつく、目線を下げるなどのマイナスなアクション
- 時計を見る、周りを見るなどの集中できていないアクション
- 腕を組む・背もたれにしっかりと寄りかかる
子供の頃に校長先生などが会話の始めに「え〜」を必ず入れることを真似したり、先生の言葉のイントネーション(文章の末尾が上がったり下がったり)などを真似て面白がるのもミラーリングです。面白おかしく真似するのは大衆ウケを目指すならアリなのでしょうが、お客様とのコミュニケーションでは否定的な言葉・口癖は真似しないのは当然です。
また、ため息や時計を見るなどの集中できていないマイナスなアクションはスタイリストがお客様の話しを聴ききれていないことが考えられています。傾聴を心がけて本当に話したいことを聞き出した上でミラーリングしてください。またはお客様から最初から受け入れてもらえていないのかもしれません・・・こちらの記事を参照してください
腕を組む・背もたれにしっかりと寄りかかる方との対応は自分が優位に立ちたい方の典型なのでミラーリングすることでお客様はこちらが大柄な態度だと勘違いを生んでしまいます。真似しない方が良いです。
ミラーリングのやりすぎ
会話の中で気をつけなければならないのが「こちらがミラーリングを使っています」と伝わってしまうことです。あからさまなミラーリングは不快感以外の何物でもないです。
心がけることとして
- お客様の会話の終わりから2拍空ける
- 簡潔な言葉でくるお客様には簡潔な言葉で返す
簡単な要素ですが実はすごく難しいです。自分には自分のペースがあるので相手の合わせることの難しさを感じるでしょう。
逆に言えば対人コミュニケーションが苦手な方は上記を心がけるでけでも話が進みやすい環境が整います。
あえて逆をとる
心理学は学んでいる人も多い学問で、大学の講義でも心理学・倫理は学んでいる人が多いです。単位を取るための間に合わせかもしれませんが学んだ経験がある人からすれば「?これってあからさまなミラーリングじゃね?」ってなります。そんな時は「あれ?気づいちゃいました?そうです。ミラーシングなんですよ」ってネタバラシしてもいいと思います。そこから距離が近づくこともあります。
私も経験あります。ぎこちなすぎてバレちゃったこと・・・
大学を経由しない理容師・美容師は圧倒的に学問への知識が足りないです。というより数字や文字が嫌いな人がほとんどです。それは技術にも表れていて基礎技術を教えているときにパネルを引き出す角度45°・22.5°11.25°など細かく追求することで髪に動きや表情を作ることを教えたいのに、「だいたい」「このくらい」など曖昧・感覚で技術をしている方・覚えている方が圧倒的です。帰った後のお客様のお手入れまで責任持つために面倒くさくても向き合うべきです。
まとめ
カウンセリングに使える心理学は知識で知っているだけではいざという時に使えませんし、わざとらしくなってしまいます。また普段の同僚や家族の会話に中に少しづつ混ぜていくことで自分のものになっていきます。
一つの知識を得たから満足ではなく、複数の手法を混ぜながら用いることで知識を知恵に変換して自分のオリジナルを形成していきましょう。私も複数使用してお客様の対応をしています。後ほど記事にしますが、心の障害を抱えているお客様の場合ですと顧客に合わせた対応をしないと店中を巻き込んだ問題に発展します。
ネットや講習で学んだことが実践で生きる事ばかりではありません。各サロンの顧客に合わせてサロン全体で取り組んでいくことをお勧めします。
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