最近サロンの特化型が目立つようになってきたなと思います。
矯正得意、カラー得意、ボブ得意、シャンプーブロー専門、アイブロー専門・・・。個人の才能を生かし得意分野に舵を切るのはよいことです。
基本+得意分野で「やっぱり理容師・美容師は面白い!」となっていけるのが最高でしょう!
※ここで言う基本とは仕事をする以前の考え方や行動を指します。
基本は大事
先日お客様からうれしい一言をいただきました。
今日も素敵にしていただいてありがとう。
こちらこそいつもご来店ありがとうございます。
いつも手早くて所作が良く、いい気持になって帰れる。周りの評判も良いから紹介もたくさんするのよ。
相性が良くて良かったです。
相性が良いだけなら10年も通わないわよ。私たち年寄りは通っていたサロンもなくなり若い人向けの店ばかりになって行くところが無くなってきているのよ。基本がきちんとしているからもちもいいし、私と流行に合わせた髪型の相性を考えてくれるから安心して任せられるの。
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
気を付けていたことがしゃべらなくても伝わり、10年の来店という形で返してくれたお客様からの言葉です。
基本の基本が出来ていないのに、闇雲にウイッグを切ったり、入客してもただただ遠回りなだけです。設計図の無い家を建てるような物ですし、どこが悪いか分からないのにメスを入れてしまうようなもの。あとで気付くより、人より早く気付いてじっくり基本を知って、最短距離で駆け上がりましょう。
また、年配の人ほど基本が大事になります。若い人は肌にハリがあり、特別薄いところもない方が多いですが、逆なら。年配の方は基礎のオンパレードです。真剣に向き合うほど、自分が試されます。文句を言わないから簡単なのでしょうか。
所作
所作という言葉をご存じですか?主に、行い・しぐさ・振る舞い・身のこなしのことを指すことで使われます。
修業時代、どうしようもない「ぼんくら」だった私を見かねたお客様が連れて行ってくれた「高級クラブ」「ゲイバー」で「仕事ができる美しく見える動き方」として教えてもらいました。
正しい姿勢で、仕事の導線として無駄のない最短距離でできて、なおかつ、焦って見えない「静」と「動」を兼ね備えたメリハリのある動きを常に心がけてきました。この考え方が血となり身となり私の形を作ってきました。それが伝わったのだと思うと非常にうれしかったです。
崩れた言葉を使う時でも身についた所作は崩れません。言葉では見えない部分を人は感じるものです。ノンバーバルコミュニケーションでも紹介しましたね。
時間
なんでそんなに早く仕事するのですか?お客様はリラックスしに来てると思うし早いだけが能力ではないと思います。お客様は時間かけてもらったほうが丁寧だと思われるから賛同しかねます。
と言われたことがあります。
ごもっともなことですし、多くの方に言われたことでもあります。
では、自分の時間を使う分には自分の責任だとして、お客様と共有している時間を、「お客様の時間を使わせてもらって担当させてもらっている」と考えたことはありますか?
早い仕事はリラックスさせることはできないのでしょうか?私はそうは思わないです。
長く時間をかけることでリラックスできるのであれば、2時間でも3時間でもかけてあげるべきです。これを話すと「適正時間ってものがあります」と返ってくることもありました。
適正時間ってどれくらいだと思ってるの?
やっぱり1時間はかけてあげたいです。
なんで1時間なのか?誰が1時間を適正時間と決めたのか。人との違い=個性を求める理容師・美容師が、誰もが当たり前だと思っていることに疑問は思わないのか?不思議でしかたありません。
早くて雑、ガサツな対応なら言われても仕方ないですが、私はメリハリのある仕事で基本を大切にして1発で決まる仕事を心がけているので、「早くきれいに丁寧に」の能力が付いたと思います。これが私の人との違いです。
能力のある理容師・美容師が時間をかければ上手に仕上がるのは当たり前なのだと思います。でもそれでは私自身が強みがない人間だったのでその他大勢と一緒で違いが出しにくいと私は思いました。
ほかの美容室で1時間かけた仕上がりが40分で同じかそれ以上の仕上がりで、接客も悪くなく常に情報を提供してくれるとなればお客様はどちらを選ぶか。選択権はお客様にあります。
お客様からも「雑だからもっと丁寧に」と言われた記憶はほとんどないですし、「早いのに丁寧で再現性が高い」と言われてお客様からの紹介率も1番高いです。
理容師・美容師は顧客単価を考えますが時間単価も考えてますか?60分で¥4,000。40分で¥4,000なら前者は10分¥666ですが後者は10分¥1,000です。スタッフ2人で一人のお客様を担当していると考えるなら、前者は¥333後者は¥500です。この考えをスタッフのうちに当たり前にとらえておけば、経営者になった時の礎になります。
時間は唯一(言い過ぎかもしれませんが)階級、身分、年齢、性別を問わず平等に与えられたものだと考えています。1分1秒をどう使うか。どう考えるか。わたしは大切な事だと思い行動しています。
「今日は時間がないから40分で仕上げてほしい。」こう言われたときにどう答えますか?「1時間かけることで仕上がるスタイルなのでどうやっても短縮することができません。」とはねのけますか?最善の努力はしますよね?毎回最善の努力をすればよいだけです。そこから生まれる工夫を取り入れて自分の形に仕上げればよいのです。早いのに余裕がある仕事になっていきます。
ひょっとしたら盛り上がっているのは自分だけで、お客様はトイレにいきたいかもしれません。腰の悪い方などは出来れば早く終わってもらいたいと言います。速さも技術です。
先程の彼女がいうように、早いだけが仕事では無いですし、ゆっくり時間をかけてもらいたいお客様も当然いらっしゃいます。しかし経営者になってお店の経営、個人の生活を工面するときに必要なのは人材とお金です。一人で独立を考えているなら自分自身が人材です。理屈でお金は生まれません。だからこそスタッフで使われているうちに最大限の努力をするのです。独立後に経験を生かしてやりたいことをやるのです。
私のような個性は同業者には理解されないことが多いですが、異業種の方、お客様には理解してもらえることが多い考え方でもあります。
客数
時間効率を考えることで多くのお客様を担当することができます。
これはお金では買えない最高の経験値です。
月間50人の担当者には50人の経験とデータが積み重ねられますが、月間1000人以上担当することでしか得られない経験とデータが積み重ねられます。これは圧倒的に差になります。
骨格・髪質・生えクセはたまた国籍。全く同じ人はいないので多くの経験を積んだ人にしか導けない答えもあります。そして私たちの仕事は経験数が工夫を生み、違いを作って行きます。イメージだけでは表現できません。
前回凄く良かったから同じにして欲しい!
嬉しい事ですよね。でも似たように作ることはできても全く同じにはならないものです。
何故か。
その時の立ち位置、ハサミの入刀角度、パネル、毛束の引き出し角度、すき具合、お客様の頭の角度等複雑な要素が重なって違いは生まれます。私はそこに疑問を覚えました。
基本を大切にする事でその違いを減らす事は可能であると考え、徹底的に基本の見直しをする事で再現性の高さと前回との違いの誤差を無くすように努力しました。
私たちは国家資格を与えられて、お客様に向かって鋏を使うことを許されたプロです。プロとして向き合うことは困難を極めますが同時に楽しいことでもあります。
ですから、混雑した営業後「疲れた」とほかのスタッフから声が上がると不思議に思います。私は「楽しかった」なので・・・
やはり振り返るところは基本です。技術ならカットの切り方ではなく、切る前のフォーム・鋏の使い方・動作、左手の重要性、ブローならブラシの特性と動かし方・根元の重要性・ドライヤーの角度、シャンプーなら姿勢と頭の形を捉える左手の動きなど。
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